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shigshig

気ままに使うブログです。

うまれなおし(刃丹応楓SS) ※執筆中 ※R-18予定


刃ちゃんが自分の体が復元するまでの間今までの人生を想起するお話です。
応星の人生を小説ベースにして私が思い出せるように&物語として読みたいと思って書き始めました。捏造に捏造を重ねているうえに設定間違い等ありましたら申し訳ありません…。

一応刃丹はVer4.2の二相楽園のテレビタワーにいるところを軸に書いています。
話が進むとR-18になるので、R-18パートを掲載するときに鍵を掛ける予定です。




支離剣の破片で幾度も己の体を傷つけた。傷つける度に新しい血が流れては癒えていく。

憎い。憎くて仕方がない。倏忽という我々の全てを変えた豊穣の忌み物が今、もう間も無く手を伸ばせば届く距離にいるのだ。自分を傷つけなければ、魔陰という厄介な衝動に理性を奪われ、何もかもを破壊しながらひたすら真っ直ぐに無鉄砲に倏忽へと突撃しかねない。いや、この身体ならするだろう。そのために自分を傷つけて、必死に理性を掻き集めているのだから。

「刃…刃…!しっかりしろ…!」

一等憎たらしい顔が意識の飛びかけている刃の目の前に躍り出る。本来よりも燻んだ緑青の瞳に不安と懸念をいっぱいいっぱいに含ませて、こちらを覗き込む。

ああ、かつてのお前は癒しの力も持っていたな。ふとそんな郷愁に駆られる。それと同時に今はそれがなくて良かった、とも。

周りの敵はひとまず一掃しているはずだ。ならば、と刃は目の前の憎たらしく愛おしい存在の肩に己の頭を預ける。

「たん…こう…。悪いがすこし…ねる…。敵がきたら…おこせ…いいな…」

刃のすぐそばで僅かに息を呑む気配がしたが、やがて「わかった」と返事が降る。

「休んでくれ、刃…」

その言葉を最後に刃は死を迎えるように、意識を手放した。



〜〜〜〜〜〜〜



星が赤く染まる。あちらを見やれば化け物の群れ。そちらを見やれば同胞の死体の山。家は燃え、地は血に染まり、見事な地獄絵図と化していた。

少年はひたすら逃げた。両親はすでに化け物の餌食になってしまった。この星のどこかへ逃げるのではダメだ。星の外へ逃げなければ。

そうしてなんとか天外へと至る船に乗る。しかし少年の体は尚も震えていた。目を瞑ると目の前で化け物が人を食う光景が広がる。耳の向こうで咀嚼する音と恐ろしい遠吠えが聞こえる。少年の涙は止まらなかった。そして少年は決意する。いつか必ず故郷を滅ぼし、両親を殺したかの化け物どもに死を贈ってやるのだと。



ゆるりと瞼を開ける。人々の悲鳴や遠吠えは聞こえず、代わりに鳥の囀りがと柔らかな水の流れる音が聞こえる。夢を見ていたのかと周りを軽く見渡せば、「起きたか」と頭上から声が降ってきた。その声に応星は、ああ、と思い出す。そういえば自分は今丹楓の元へ訪れていたのだった。

「悪い夢でも見ていたか?眉間に皺が寄っていたぞ」

丹楓はそう言って応星の眉間を人差し指でぽんと叩く。そうされて初めて応星は自分が丹楓に膝枕されていることに気づいた。

「少し、ガキの時の夢を見てた。ていうかいいのか?羅浮の龍尊様がこんな殊族の民なんかに膝枕なんかして」

そう言って応星は起きあがろうとしたが、丹楓の右手が押さえつけるようにしてそれを阻止した。それに従って大人しく丹楓の膝を枕にすれば、丹楓の右手がいい子いい子と言わんばかりに応星の頭を撫で出すものだから、応星は心の中で降参のポーズを取った。

「はぁ…なぁ丹楓。俺も普通にいい歳した大人なんだが」

「創作に煮詰まったからとわざわざ余のところに来てふて寝する童がか?たかだか三十年ほどしか生きとらんだろう」

「勘弁してくれ。お前たちの寿命で測られたら大抵の生き物は赤ちゃんになる」

「それで?大抵のことで手を止めないそなたが、此度はどうした」

口元を緩やかに弧を描かせ、目を細めて顔を覗き込んでくる。応星はその表情で丹楓が自分を見て面白がっていることに気付いた。それに睨めつけるようにジト目を返しながら応星は諦めたようにため息を吐き出して口を開いた。

「お前のための武器を考えてたんだよ」

「余のための?」

丹楓は応星の言葉を聞いて驚きに目を丸くする。はて、自分はこやつに武器を造ってくれと強請っただろうか。

「ああ、お前の。いつまでもあんなボロっちい槍使ってるわけにはいかないだろ?」

「ボロっちい槍…」

一応丹楓の槍は、年季が入っているとはいえ、羅浮の中でも名のある名工によって打たれた槍である。それをこの小僧は十か二十そこいらしかその職に就いてないというのに、ただのボロであると表現したのだ。羅浮の工造司に来るより前から周りの者から疎まれていたとは聞いたが、名工の作をオブラートにも包まず大したことないと言えば人々から疎まれるのも無理はないなと、丹楓は視線を明後日に向けながら思った。

「お前の槍もいいもんにしてやろうと思って構想を練ってたんだが…どれもこれもしっくりこないんだ。使いたい素材は決まってるんだがな…」

「はぁ」

「それでどうせなら本人を見てインスピレーションを得ようと思ってここに来たんだ」

「…ふぅん…それで?何日寝ていない?」

「えっと…たぶん五日…とか?」

あはは、と苦笑いする応星に丹楓は重くため息を吐く。数分前の応星がここに訪れた時を思い返す。ふらふらと幽鬼のように覚束無い足取りで、目の下にびっしりと隈をつけて、誰がどう見てもその男が寝ていないことは明らかだった。

『応星…そんな状態でここへ来てどうした?』

『丹…楓…』

頭痛がするのだろうか、片手で頭を抑えて丹楓の元へと歩み寄ろうとするがふらつき、倒れそうになったところを丹楓はなんとか支えた。

『おい、しっかりしろ。今度は何日寝ていない』

『わからん……わすれ…た……』

丹楓に支えられたことで何か安心したのか応星はそのまま丹楓に身を預けようとする。自分よりも大柄な男に寄りかかられて丹楓も踏鞴を踏む。

『おいっ、重いぞ!応星!』

『すまん…丹楓…ねむ…い…』

そうして応星は丹楓に体を預けたまま意識を手放した。丹楓ははぁ…とため息を吐く。この体躯を寝具のある部屋にまで運ぶのは少々骨が折れる。ここは執務室だが致し方あるまい、となんとか応星を寝かせて膝の上に頭を置いた。

そうして現在の状態に至るわけだ。

「そなたはインスピレーションを得る前に十分に休息を取るべきだ。武器の鍛造はそれから考えろ」

丹楓はへらへらと笑う応星の額に手刀を軽く落とす。いてっと大袈裟に振る舞う応星はここへ来た時より随分と人の様子を取り戻したようだった。

「必要なら余の寝床でも使うか?仕事が残ってるから余はここにいるが」

その言葉に応星はぎょっとした。ぶんぶんと顔を横に振り、まさかとんでもない!と丹楓に示した。

「羅浮の龍尊様の寝床に俺みたいなのが寝てみろ!龍師の爺さんたちになんて言われるか…!」

その言葉に丹楓は首を傾げる。

「前日余を抱いたくせに何を今更…」

「おいバカ白昼堂々と言うな!俺がここに来れなくなったらどうする…!?」

丹楓は本日何度目かになるため息を吐いた。応星の言うことも然りではある。龍師たちはただでさえ丹楓が勝手な行動をすることをよく思っていない。龍師たちにとって必要なのは丹楓の器や知識だけであって、丹楓自身の意思などは邪魔でしかないのだ。名目上丹楓が不朽の龍の継承者で一族の長である龍尊であるので丹楓の決定や命令には従うが、その存在が目障りになれば龍師たちはいつだって丹楓を始末するだろう。文献に詳しく残っている訳では無いが、これまでの龍尊にも少なからず奴らの手に掛かった者は少なくないだろう。

そんな丹楓が最近、仙舟では少し異質な部類の者たちとつるみ出したのだ。龍師からすれば面白くない状況である。

丹楓の友と呼べる者は四人。狐族の白珠、仙舟「蒼城」の剣首鏡流、鏡流の弟子である景元、そして仙舟の百冶応星だ――応星に至っては身体を重ねた仲であるので、もはや友という枠組みではないかもしれないが――。ともかく龍師たちはにとって丹楓が彼らと仲睦まじくすることは都合の悪いことなのだ。

そんな都合の悪い仲間のうちの一人がここ最近頻繁に丹楓の楼へと足を運んでいるというのだから、龍師の目はそれはもう光に光っていた。丹楓が応星のことで小言を言われたことも一度や二度じゃない。だが今だに応星が丹楓の楼に立ち入ることが許されているのは、偏に丹楓が龍師たち相手に口が立つだけではない。応星が短命種だから、というのが一番大きかった。

龍師たちはただの短命種だと応星を下等に見ている。丹楓の傍にいたとして年数にしてもたった百年ぽっち。長命である彼らや丹楓にとって瞬きのような時間だ。

だからよっぽどのことがない限り応星が丹楓の楼から追い出されることはないだろう。たとえ褥を共にしたからと言って龍師からすれば丹楓の火遊びのように見えるだろう。それでいいのだ。丹楓の心まで彼らが知る必要などない。

「なら余の仕事が終わるまでここにいろ。今日は休暇だと思って泊まっていくといい。どうだ?」

「…お前がそれで何も言われないなら…」

「ならばよし。ほら」

丹楓はぽんぽんと膝を叩く。

「もう一度寝ろ。仕事が終わったら起こしてやる」

応星は無性にそれが恥ずかしくなり顔を赤らめるが、断るのも勿体なく感じたので、大人しく再び膝枕を甘受することにした。


•·················•·················•

丹楓がその少年を見留た時、少年は大きな藍紫色の瞳をキラキラと輝かせ、こちらを惚けたように見つめていた。そばに居た白珠が「飲月君、来てくれてありがとうございます!」と相も変わらずハツラツとした息で言葉を発する。それに丹楓は微笑みで応えた。

「飲月君、この子が前に言っていた朱明の凄腕の職人さんです!まだ十代なのに他の鍛冶師よりもずっと腕がいいんですよ」

そして白珠はそばで惚けている少年の背中を両手で押し出すように軽く叩く。

「ほら応星、この方が羅浮の龍尊、飲月君ですよ。挨拶して?」

そう言われて初めて応星と呼ばれた少年はハッとして我に返り、餅のような頬をみるみら赤く染めながら、もじもじと少年特有の高く柔らかな声で名を名乗った。

「お、お初にお目にかかります。朱明工造司の職人、応星…と申します。その…えと…」

まだ声変わりもしておらず、身長も女性である白珠よりも低い。髪がやや長いところから一見すれば少女のようである。白珠曰くこの少年はかの懐炎将軍を師として仰ぎ技術を学んでいるという。その腕はこの歳で職人の称号を会得し、他の鍛冶師たちからはその能力の高さから、また彼が殊族の民であることから目の上の瘤として疎ましがられているという。視線を下に落としおどおどと話すその様から、まさか彼が名工顔負けの創造物を造るとは、丹楓にもにわかに想像がつかなかった。

「龍尊様…」

「丹楓だ。応星と言ったな。もしか良かったらそなたの作品をひとつ余にも見せてくれないか?」

丹楓のその言葉に応星はぱっと顔を明るくさせて輝かせる。その表情だけで丹楓はこの少年が如何に愛情を持って作品作りをしているのかが伺えた。

応星はいそいそと大事に抱えていた物を円卓の上に置いて、そっと風呂敷を開く。中から現れたのは陣刀の穂先のようなものだった。

「これは陣刀か?」

丹楓は見て思ったままのことを応星に言った。しかしどうやら正解であったようで、応星は「はい」と答える。

「まだ試作段階ですが、おそらく来週には完成品が出来上がると思います」

先程とは打って代わり、淀みなく言葉を紡ぐようになった少年。その表情には作品への自信が現れている。実際丹楓が目にしても、その試作品の出来は見事なものであった。歪みなくまっすぐ打たれた柄。決して派手でなく、しかし繊細な装飾と掘り。全てがバランスよく整えられており、弱い十程の少年が打ったとは到底見えないほどの代物だった。

きっと彼はこの仙舟でも逸材になるに違いない。丹楓は早くもこの内気な雪色の髪を携えた少年に心の踊るような期待を寄せた。

そんな邂逅を迎えてから応星は度々丹楓の元を訪れた。彼は朱明に属する鍛治師であるのでそう多い頻度で羅浮を訪れられはしなかったが、羅浮に来る時は必ず丹楓の元へ己の作品を携えて会いに行った。丹楓も応星が来る時は必ず時間を空けるようにしていた。そうして僅かな逢瀬を重ねること数年、応星は羅浮の工造司に派遣されることになり、二人の物理的な距離はぐっと縮まった。その頃には応星は花のように可憐な少年は身を潜め、灼熱の炉の前で力強く槌を振るう立派な青年へと成長しており、以前のような内気で恥ずかしがり屋な性格はどこへ行ったのか丹楓に似て不遜で傲慢な言動を取るようになっていった。白珠などは「自信が出てきていいことですね!」とひどくポジティブに受け止めていたが、鏡流は「いけ好かぬ童がさらにいけ好かなくなった」と酷評だった。かくいう丹楓はといえば、白珠の意見が多少と、「それほど自分に似ただろうか、あまり変わったところはない気がするが」という意見だった。

そうして仲間たちと酒を酌み交わし、最近鏡流に弟子入りしたという景元少年を揶揄い、そしてやがて応星は仙舟人でさえ手に入れるのが難しい「百冶」の称号を、短命種という身分で獲得したのであった。

その知らせを聞いた時、丹楓は応星という存在が一等誇らしく感じたものだった。この少年はいつか大成するだろうと初めて会ったあの日に抱いたものだが、それがこんなにも早く実り育つとは。応星の才覚を認めると同時に丹楓はその生き急ぐような生き方に、彼が短命種で百年も生きられない種族であることを嫌でも痛感する。

彼が幼き日の頃一度だけ身の上話を聞かせてくれたことがある。彼の故郷は豊穣の忌み物に食い荒らされ侵略され、家族も友人も皆殺されたのだと聞いた。そうして小さな体一つだけで必死に走り、行き先も知らぬまま船に乗ってこの仙舟同盟に流れ着いたそうだ。そして彼の内にある密かな野望も聞いた。

『私は飲月君のように長くは生きられません。だから武器を作るのです。私の作った武器がいつかこの世から豊穣を滅してくれると信じて』

憂うように伏せられたその目には燃えるような復讐の色と強い志がゆらゆらと揺れていた。丹楓はそれを見た時ーーこの小さな体でその命で、常人には背負えないものを背負おうとしていると知った時、丹楓はそっとその白い頭を優しく撫でた。

『そなたは才あるものだ。そなたの造った武器はいつか必ず、そなたの悲願を果たしてくれるだろう』

余もその礎になろう。そう丹楓が口にした時応星は勢いよく丹楓の顔を見て、その表情を喜色に変えた。

『ありがとうございます、飲月君…!』

そして二人は時々豊穣の忌み物をより効率よく滅するにはどうするのがいいのかをたびたび議論に挙げては、それを元に応星が作品を作る、ということを繰り返していた。

丹楓はふと思い返す。あの幼い彼の悲願の礎に自分もなろうと言ったから、彼は丹楓の武器を作るために睡眠を削っていたのではないかと。

しかしどうして今になって自分の武器を応星が作ろうと思うようになったのか、丹楓にはわからなかった。自分も礎になると言ってから今までの間にも応星は多くの武器を鍛造してきたが、丹楓の武器を作るとは一言も言ったことがなかったからだ。

気まぐれか、今思い出したか…。

別に丹楓も自分の武器が欲しかったから応星にあのようなことを言ったわけではなかった。目にかけてやりたいと思うくらい可愛がっている少年が、大事を成し遂げようとしているから少しばかり応援するつもりで言ったのだ。決して軽い気持ちで、それこそ応星の気持ちを軽んじて慰め程度で言ったわけではないにしろ、その時の応星のためにしてやれることをしてやりたいと思ってのことだった。

「……」

己の膝の上ですぅすぅと眠る男を見遣る。昔の可愛らしかった面影なんてもはや髪の色と瞳の色くらいしか残っていない。それでも丹楓はあの時と変わらない穏やかな手付きで、雪色の頭を撫でた。

応星は昔に比べて笑うようになった。鬱々としていて引っ込み思案だった彼が、今では明るく大きな口を開けて笑うようになったことに対して満たされる思いがある。だがそれでも豊穣への憎しみは日々募るばかりなのか、あの日に見た瞳の炎はより激しく燃えている。丹楓はその時、この男はなんと愛情深い男なのだろうと思った。

愛情が深いから自分を受け入れてくれたもの全てに恩を報いようとする。目をかけてくれた分だけ、むしろそれ以上に尽くそうとするのだ。

丹楓は規則的に穏やかな呼吸を繰り返す愛おしい男に胸の中で懇願する。

破滅しないでくれ、と。ただでさえ共にいれる時間が短いのだから、長生きしてくれ、と。

口にしないのはそれが彼にとっての地雷となり得ることがわかっているからだ。そして羅浮では長生は願ってはいけない、求めてはいけないものだ。そう願えないことがこんなにも苦しく感じる日が来るなんて、丹楓は思いもしなかった。

「応星…」

応星の頭を抱えるようにして蹲る。

「もしそなたが死んでしまったら、余はその日に古海へと足を運んで卵になるかもしれん…」

小さく呟いた言葉は五日徹夜をして睡眠を過度に欲している男の耳には届かなかった。


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